ビーン・トゥ・バーチョコレートとは
従来型の多くのチョコレートの製造工程は、カカオマス(ペースト状に加工したカカオ)を原料とし、ほかの材料と混合して板チョコに成形するというプロセスです。一方、ビーン・トゥ・バーとは、原材料のカカオ豆から板チョコが完成するまで(Bean to Bar)、すべての工程を一貫して行い、カカオのクオリティとチョコレートメーカーのスタイルをより丁寧に、明確に反映した製品づくりが可能な製法です。
カカオ豆を選別、焙煎し、皮を取り除き、摩砕、精練した後、テンパリングし、手作業で包装する。生のカカオ豆から、完成品の板チョコレートまで、私たちの工房内でそれらすべてのプロセスを、少量生産で行っています。
しかし、私たちのチョコレートは、ただ美味しさを追求しているだけではありません。 ビーン・トゥ・バーのメーカーの多くは、製造工程のディティールこだわるだけではなく、カカオの生産者や協同組合と直接かかわり、世界で最も貧しい地域に重なるカカオ産地から、できる限り高品質で適正な価格の原材料を買い入れています。 チョコレートの有名大手企業のなかにも、カカオ豆からチョコレートを製造している工場はあります。しかし、その生産スケールは非常に大きく、産地ごと、品種ごと、収穫年ごとに異なるカカオ本来の個性を活かすことよりも、常に均一の味わいを大量に、効率よく、継続的に生産することに重きが置かれているのです。
ファインチョコレートは、急ぎません。私たちのチョコレートは、フレッシュでピュア。プロセスを早めたりコストを減らすために乳化剤を加えたりはせず、カカオ本来のアロマを大切に活かすので、香料を使う必要もありません。製造工程は数日間に及ぶけれど、それだけの甲斐はあります。手間ひまかけた精練のプロセスは、シルクのようになめらかなチョコレートをもたらすと同時に、石で摩砕され、温めながら練り上げられることで、好ましくない酸を和らげ、調和のとれたエレガントな味わいに仕上げることができるのです。
チョコレート作りのすべてのプロセスに細心の気遣いを尽くすこと、固有のアロマが頂点に達する瞬間や、望み通りのテクスチャーに近づくタイミングを知ること。そんな愛情と献身によって、チョコレートはその複雑な味わいのすべてを披露し、味わってくれる人々をして、カカオそのものや、その産地にまで思いを馳せるポテンシャルを発揮するのです。
カカオのテロワールは、優れたワインと同じく、そのテイストとキャラクターに独自の個性をもたらすのです。 チョコレートは、単なるお菓子やスイーツではありません。それは、豊かな五感の快楽と奥深い探求心を満たす、大人の嗜好品なのです。