フェイトリア・ド・カカオは、ポルトガル人のスザーナと、ポルトガルに住む日本人トモコが、西アフリカはギニア湾に浮かぶ旧ポルトガル領の小さな島国、サントメ・プリンシペを旅した日から始まりました。サントメ・プリンシペでは、いくつものカカオ農園を訪問し、実際にカカオを栽培している人たちと直接ふれ合う機会に恵まれました。
そこで目にしたのは、カカオがどのように栽培、処理されて、世界中のチョコレート業者の手へ渡るのか、ということだけではありませんでした。それよりももっと衝撃的だったのは、私たちが知るチョコレートの甘くリッチなイメージとはかけ離れた、カカオ生産者の苦くも貧しい暮らしの現実でした。 それは、大きなショックでした。温かく迎えてくれるサントメの人々の無垢な笑顔とやさしさ、自らの無知と世界の不条理に対する暗澹たる思いが、私たちの心に焼きつきました。微力であれ、カカオ生産者とチョコレート産業の間に存在してきた経済的な落差を、少しでも埋めることに役立てたら…。そんな、サントメ・プリンシペでの得がたく忘れがたい体験と思いが、フェイトリア・ド・カカオのプロジェクトを立ち上げる力をくれたのです。
それから約一年間、ショコラティエ及びチョコレートメーカーの専門講座を受講し、勉強と調査を重ねながら、世界中の様々なカカオについて研究、試行錯誤を繰り返しました。そしてようやく、それぞれの産地のテロワールがもたらすカカオ独自のキャラクターを宿した私たちなりの製品を、完成させるに至ったのです。
原料の個性を尊重し、製造プロセスすべてのディティールに細心の注意を払いながら、カカオ豆から板チョコレートまで、極小ロットで造りあげるチョコレート、ビーン・トゥ・バー。フェイトリア・ド・カカオは、ポルトガル初のビーン・トゥ・バー・ブランドであり、このカテゴリーにおけるパイオニアとなりました。プロジェクト当初から私たちを動かしてきたテーマ; 使用する原材料に対して、従来の市場価格よりも高い価格、あるいは高品質なカカオに対し、生産者の努力と献身に見合った適正な対価を支払うことを、実践しながら。
フェイトリア・ド・カカオのチョコレートは、2017年以降、アカデミーオブチョコレートアワード、インターナショナルチョコレートアワード、グレートテイストといった、業界で最もハイステイタスな国際コンクールにおいて、そのクオリティーを評価されています。
ビーン・トゥ・バーチョコレートとは
従来型の多くのチョコレートの製造工程は、カカオマス(ペースト状に加工したカカオ)を原料とし、ほかの材料と混合して板チョコに成形するというプロセスです。一方、ビーン・トゥ・バーとは、原材料のカカオ豆から板チョコが完成するまで(Bean to Bar)、すべての工程を一貫して行い、カカオのクオリティとチョコレートメーカーのスタイルをより丁寧に、明確に反映した製品づくりが可能な製法です。
カカオ豆を選別、焙煎し、皮を取り除き、摩砕、精練した後、テンパリングし、手作業で包装する。生のカカオ豆から、完成品の板チョコレートまで、私たちの工房内でそれらすべてのプロセスを、少量生産で行っています。
しかし、私たちのチョコレートは、ただ美味しさを追求しているだけではありません。 ビーン・トゥ・バーのメーカーの多くは、製造工程のディティールこだわるだけではなく、カカオの生産者や協同組合と直接かかわり、世界で最も貧しい地域に重なるカカオ産地から、できる限り高品質で適正な価格の原材料を買い入れています。 チョコレートの有名大手企業のなかにも、カカオ豆からチョコレートを製造している工場はあります。しかし、その生産スケールは非常に大きく、産地ごと、品種ごと、収穫年ごとに異なるカカオ本来の個性を活かすことよりも、常に均一の味わいを大量に、効率よく、継続的に生産することに重きが置かれているのです。
ファインチョコレートは、急ぎません。私たちのチョコレートは、フレッシュでピュア。プロセスを早めたりコストを減らすために乳化剤を加えたりはせず、カカオ本来のアロマを大切に活かすので、香料を使う必要もありません。製造工程は数日間に及ぶけれど、それだけの甲斐はあります。手間ひまかけた精練のプロセスは、シルクのようになめらかなチョコレートをもたらすと同時に、石で摩砕され、温めながら練り上げられることで、好ましくない酸を和らげ、調和のとれたエレガントな味わいに仕上げることができるのです。
チョコレート作りのすべてのプロセスに細心の気遣いを尽くすこと、固有のアロマが頂点に達する瞬間や、望み通りのテクスチャーに近づくタイミングを知ること。そんな愛情と献身によって、チョコレートはその複雑な味わいのすべてを披露し、味わってくれる人々をして、カカオそのものや、その産地にまで思いを馳せるポテンシャルを発揮するのです。
カカオのテロワールは、優れたワインと同じく、そのテイストとキャラクターに独自の個性をもたらすのです。 チョコレートは、単なるお菓子やスイーツではありません。それは、豊かな五感の快楽と奥深い探求心を満たす、大人の嗜好品なのです。
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Susana Tavares & Tomoko Suga, Lda.
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